職業訓練校について

職業訓練校 デザイン

私はwebデザイナーを目指すに当たって、職業訓練校に6ヶ月通いました。

これからWebデザイナーを目指して職業訓練校に通おうか迷っている方向けに私の体験談や感想を綴ってみたいと思います。

なお、これは私が通った学校についての話であり、すべての訓練校が同じ状況ではないので参考程度にして下さい。

結論: 職業訓練校を卒業してもWEBデザイナーにはなれない。

いきなり全否定(笑)

しかし、職業訓練校を卒業しただけでWEBデザイナーになれるかというとかなり厳しいというのが私の意見です。

その理由は以下の3点です。

1. WEB制作に必要となる知識が広過ぎる

WEBについての知識や技術は非常に幅広いです。

  • Photoshop、illustratorといったデザイン作成に必要となるAdobeソフトの使い方
  • デザインの基礎的な知識、Webデザインの知識
  • HTML、CSS、JavaScriptといったプログラミング能力
  • WordPressに代表されるCMSについての知識
  • パソコン、スマートフォン、ブラウザについての知識
  • ドメイン、SSL通信、FTPなど、ネットワークやサーバの基礎知識
  • SEO対策、Google広告、各種SNSでのマーケティングなどの知識

すぐに思いつくところでこのくらいあります。これをIT系・デザイン関係全く未経験の人が6ヶ月学校に通っただけで習得できるかというとほぼ無理ゲーです。学校もそれが分かっていて全部は教えてくれなかったりします。私が通った学校は6ヶ月間のコースでしたが、JavaScriptやWordPressは授業ではやりませんでした。

これは学校が意地悪で教えていないのではなく、教えるべきことが多過ぎて最低限のWEBサイトを作れるレベルまでの授業しかカリキュラムに入りきらないという感じでした。

2. ポートフォリオの作品数が足りない

WEBデザイナーの就活をする場合、ほとんどの企業でポートフォリオ(自分の作品集)の提示を求められます。

私が訓練校の授業で作ったサイトは4つでした。

ポートフォリオは10作品くらいは欲しいと一般的にいわれています。

学校で作った作品だけでは到底足りません。

3. 企業は即戦力を求めている

職業訓練校から就職する場合、当然ながら中途採用案件への応募になります。中途採用で求められるのは即戦力。

特にWeb制作は労力の割にクライアントからいただけるお金がめちゃくちゃ安いことが多いです。このため「最初は一人じゃできなくても仕方ないよねー」とか言っているとすぐに赤字案件になってしまいます。

ほとんどの企業側は職業訓練校の一般的な卒業生のレベルは分かっていますし、なによりポートフォリオを見れば実力は一目瞭然です。

本当に人手が足りなくて猫の手も借りたいような会社でもない限り、職業訓練校卒業者をとるくらいなら美大の新卒の若い子を採って育てるのが普通でしょう。

というわけで、訓練校を卒業してもWEBデザイナーにはほぼなれないです。

実際私の同級生も途中で学校を辞めてしまう人、卒業したもののWEB制作以外の職についた人が多かったです。

じゃあ職業訓練校は通っても意味がないのかというとそうではありません。

結局、自力でできることを証明するしかない

前述の通りWeb制作は案件の単価がめちゃくちゃ安いので、教育係が付いて手とり足取り教えながら仕事を覚えてもらうことが難しいです。

逆に言えば、一人である程度仕事が進められて、今後も自分で成長できそうな人であれば、企業側も「まぁ採ってもいいかな」となる可能性があります。

なので、基本はやはり独学で勉強しポートフォリオに載せる作品も作っていく姿勢が必要です。

その上で更に勉強の一貫として訓練校に通うというのはアリだと思います。

訓練校をメインに自習をするのではなく、あくまでメインは独学、その中で訓練校を利用するくらいの心持ちが必要です。

訓練校が教えてくれること

私が受講した訓練校のWebクリエイター養成コース(6ヶ月間)についてですが、どのようなことを教えてもらえるのかカリキュラムをご紹介したいと思います。あくまで私が通っていたコースについてなので、すべての学校が同じというわけではないと思いますので参考情報としてご覧ください。

私は、入学前の事前説明会でカリキュラムのパンフレットや授業日程表をもらったのですが、実際受けた授業はそれらの資料に書かれているものと異なっていました。パンフレットのカリキュラムにはWordPressも教えてくれると書かれていたのですが、授業では全くやりませんでした。

同じ学校・同じ先生でもクラスによって授業の内容も変わるようです。クラスによって理解度が異なるため、理解が早いクラスではいろいろなことを教えられるけど、理解が遅いクラスは基礎を重点的にやるためその分応用的な内容は省かれるということですね。

前置きが長くなりましたが、私が訓練校で受けたカリキュラムは以下のような内容でした。

  • Webデザイン論
  • illustratorの使い方
  • photoshopの使い方
  • HTML/CSSの基礎
  • jQueryの使い方
  • 内部SEO対策のやり方
  • 動画編集
  • パンフレット制作(グループ)
  • Webサイト制作(グループ、個人)

期間としては、デザイン(Adobeソフトの使い方含む)についての授業が2ヶ月、コーディングについての授業が2ヶ月、制作演習が2ヶ月というバランスでした。

以下、各項目について詳しく記載します。

Webデザイン論

デザインの基本4原則(整列、近接、反復、コントラスト)の話や、実際のWebサイトを見ながら、そのサイトはどのようなターゲット層を考えて作られているのかを分析する演習などを通して、デザインの基礎的な話を学びました。フォントや色、よくあるレイアウトパターンなども学びました。

illustratorの使い方

Web制作をする上で必要となるAdobe illustratorの基本的な使い方を習いました。

ペンツールの使い方から、整列、パスファインダー、アピアランスなどの使い方などを習い、簡単な図形の作り方やキャラクタイラストの制作演習などを行いました。

実際にWebの現場で働いてみると、意外にillustratorで説明図などを作ることがあるのでillustrator習っておいて良かった!

photoshopの使い方

基本的な使い方から、写真の簡単なレタッチ技術、合成技術を学びました。また、photoshopでのデザインカンプの作成方法も学びました。学校のWebサイト制作演習では全てphotoshopでデザインカンプの作成を行いました。私の学校ではXdは教えていませんでしたが、他の訓練校を卒業されたデザイナーの方の話では、Xdも習ったとのことでしたので、学校によってはXdも教えている学校もあるようです。

現場では写真のレタッチが必須なので、これも習っておいて助かっている技術ですね。もちろん学校で習ったレタッチ技術だけでは足りないため別途自習が必要ですが、基礎が分かった状態だと自習もやりやすいです。

ただ、欠点もありました。

まず学校のPhotoshopのバージョンが最新版では無かったです。CS6という古いバージョンでした。学校の先生いわく、「まだCS6を使っている会社もあるからわざと古いバージョンで教えている」とのことでした。ですが、実際に仕事をしてみると、明らかに最新版を使っている会社がほとんどです。

最近のillustratorやphotoshopはサブスクリプション形式であるため、毎年利用料金が掛かる利用形態となっています。CS6であれば買い切り形式のため、それを未だに使っているというのが本音ではないかと思われます。

また、パソコンの性能がかなり悪く、よくフリーズしていました。Photoshopは非常に重いソフトウェアです。このため、Webデザイナーがパソコンを購入する際は、メモリを16GBは積みます。しかし、学校で利用していたパソコンのメモリはなんと4GB!1操作するたびに5秒から10秒程度の待ち時間が発生する操作感でした笑 Windows Updateがバックグラウンドで自動更新を始めるともはや作業が出来ないという状況でした。

訓練校はタダで学べる分、学校側はとにかくお金が無い様子でした。設備などはかなり劣悪なのでこの辺は覚悟しておいたほうが良いかもしれません。

HTML/CSSの基礎

最低限のWebページを作成できる基本的な内容は習います。卒業制作でみんなWebページを作成できていたので、本当に何も知らない人でもぱっと見きちんとしたWebページを作成できるようにはなります。レスポンシブのやり方なども習いました。

ただ、時間的な制約もあるので全部は授業ではやりませんでした。例えば、before, after, nth-childといった疑似要素の使い方やflexの細かい使い方などですね。ただ、制作演習のなかで必要性が出てきたときに先生に質問すると個別には教えてもらえました。

授業はあくまで基礎のみ習いますので、現場で使えるレベルのコーディング知識にするにはかなり自習が必要だと思います。ただ、コーディングについてはインターネット上に無料の良い教材がたくさんありますので、そちらで勉強するほうがおすすめです。自習で分からなかったところ、うまく動かなかったときに先生に質問するというのがうまい訓練校の使い方かなと思います。(学校や先生によっては、授業と関係のない質問は受け付けてもらえない可能性もありますが。)

jQueryの使い方

Webページでのアニメーションを組み込む際に主に使われるjQuery。

これも本当に触りだけやりました。(1日くらい)

スライダー、ドロワーなどのjQueryを組み込んで動かしてみる くらいです。

javascriptの文法などは全くやりません。なので、これも自習は必須です。ただ、コーダーではなくWebデザイナーとして仕事をする場合、jQueryの組み込みまで求められることは稀ですので、デザインメインでやっていきたい人はそこまで頑張らなくても良いかもです。

内部SEO

検索エンジンで、検索上位に表示させるためのSEO対策。これも1日2日ですが習いました。

これはかなり役立つと思います。インターネット上には無料で簡単に学べる教材がなかなか無いためです。SEO対策はとても重要です。せっかくお洒落なWebページを作っても、検索で上位表示されなかったら誰にも見られることのないページとなってしまうからです。

先生が仮想サイトを実際にGoogle検索で1位表示されるまでの過程を見せてくれたので、とてもおもしろく為になった授業でした。

動画編集

自分の携帯で撮った動画を加工して3分程度の動画をyoutubeにアップするという演習でした。

これは正直ただのお遊びレベルの授業でした。。

動画編集ソフトも「フォト」というWindows付属のソフトを利用するのみです。このため、あまり自由な加工は出来ません。

AdobeのPremiere Proの使い方を習うわけでもなく、動画のうまい撮り方などを習うわけでもなく、強いて言えばyoutubeへの動画アップロード手順を学ぶくらいでしょうか。どちらかというと、グループで楽しく動画を作ろう!という、ちょっとした息抜きイベント?的な感じでした。

パンフレット制作

紙物のデザイン制作演習です。illustratorの利用方法を勉強した後の総仕上げの演習として実施しました。

4,5人のグループで、illustratorを利用してパンフレットを作成するという演習でした。前職は紙物のデザインをやっていたという人もそこそこいるので、全く経験が無かった身からすると結構おもしろく勉強になりました。レイアウトやフォント、色などのデザインの考え方は紙物のデザインから学ぶことが多いです。

Webデザイナーとして就職活動をする際のポートフォリオにも紙物の制作物として載せました。Web制作会社が採用時にどの程度紙ものの制作物を見ているのかは謎ですが、独学でWebデザイナーを目指す人のポートフォリオには紙物の作品はあまり無いと思うので、差別化にはなるかもとは思います。

Webサイト制作

6ヶ月の中で4回のWebサイト制作演習をやりました。

個人制作が2回、グループ制作が2回でした。

どの回もおよそ14日間くらいの期間でした。1日の授業時間が4時間ですので56時間程度。この間でサイトコンセプトの定義、デザイン作成、コーディングまで行います。かなり忙しいです。テーマはほぼ自由で、大抵は仮想の店舗やサービスのサイトを作るという感じでした。

グループでの制作は訓練校で学ぶ醍醐味の一つだと思います。独学の場合、なかなか複数人でサイトを制作する機会は無いと思いますので。

ただ、やはりなかなかに大変です。まず、人によって知識レベルがかなり異なります。このため、どの程度のレベルのサイトを目指すのかを決めたり、うまく作業を分担するのが難しいです。(デキる人がめちゃ頑張るという構図になりがち。まぁ実際の現場でも大体そうなりますよね笑)

次に、人によってデザインの好みが異なるのでその摺合せが大変。仮想案件ということもあり実際のクライアントがいないため、みんな割と自分が作りたい感じにデザインを作り出します。このため、各ページ毎にデザインを分担するとトーン&マナーが合わない。。。意見の衝突が起こる。。。みたいな感じになります笑

ただ、他の人の制作物を見たりするのはとても面白いですし、なにより一応の強制力がありますので、就職活動に向けたポートフォリオの作成が捗るという点で、とても良いですね。私が思う訓練校に通うメリットのうち最大のポイントはこのサイト制作演習だと思います。

残念なポイントとしては、制作物に対して先生のダメ出しがあまり貰えないところ。まぁ素人が制作しているものなので挙げていたらキリがないのでしょうけど、何か改善点みたいな指摘は欲しいですよね。。

職業訓練校の勉強と並行してやるべき学習

この章では、職業訓練校で前述のような内容を習いつつ、独学でやるべきことを紹介したいと思います。

1.模写デザイン・模写コーディング

訓練校で絶対的に足りないのが「実際に手を動かして作る」という時間です。

デザインやコーディングというのは、座学で知識を覚えても絶対上手くできません。必要なのは感覚や経験です。実際にWebサイトを作るとどんなところで困るのか、困ったときどうやって解決するのか。(もしくは逃げるのか。)そういった適応力のようなものがとても求められます。

こういった適用力を身につける上で重要なのが実際に手を動かして作るという行為です。

しかし、いきなりゼロから作れ!と言われても「何を??」となってしまって、なかなか難しいですし、自習の場合、作り終わった後に添削してくれる先生がいないので、作ったものが正解なのか?も分かりません。

そんな初学者にまずオススメなのが「模写」という作業になります。

すでに世の中にある先輩デザイナー・コーダーが作ったWebサイトやバナーをできるだけそのまま再現するのです。

これだと何を作るかが明確ですし、作り終わった後(または躓いたとき)に答え合わせが出来ます。

細かいやり方については「模写コーディング」、「バナー 模写」などでググると、初心者にオススメの模写対象なども含めて出てくると思いますので調べて見て下さい。

大体Webサイトだったら8サイト(トップページのみ)くらい、バナーなら10枚くらい模写をやったら、次のステップに進みましょう。

2.クラウドソーシングのコンペへの応募

上記の模写コーディング・バナー模写をやると、大体なんとなく作れるようになっているはずです。そこで次の段階で行う学習としてオススメなのがクラウドソーシングのコンペへの応募です。

クラウドソーシングというのは、中小企業や個人商店などの割と軽めの仕事を、フリーランスや副業狙いの個人が割とリーズナブルに請け負うための仕事のマッチングサービスです。「クラウドワークス」や 「ランサーズ」といったサービスが有名です。

これらのサービスには「コンペ」といって、依頼主がWebサイトやバナーなどのデザインを広く募集して、応募された案の中から採用対象を決めるという契約方式があります。

いきなり実案件獲りに行くの!?とびっくりしてしまう人もいると思いますが、主目的は実案件を獲ることではありません。ポートフォリオ作品を充実させることが主目的です。

職業訓練校卒のWebデザイナーの場合、ポートフォリオは基本的に学校の課題で作成した作品+自主制作した架空案件のサイトやバナーになります。ただ、前述の通り学校で制作する作品数はそれほど多くありません。そこで架空案件の制作を行うことになるのですが、架空の案件の条件を何作品も考えるのは結構面倒です。

そこでクラウドソーシングのコンペ案件を使います。コンペではある程度依頼主からの要件が決められています。このため自分で架空案件をでっちあげる必要がないのです。

また、期限が決まっているため強制力が働きます

更には、これはコンペ案件の設定によるのですが、他の応募者の作品を見ることが出来ます。クラウドソーシングのコンペでも10年以上の経験をもったデザイナーさんが応募していたりしますので、とても勉強になります。

そしてなにより、万が一にも依頼主の好みにヒットすると作品が採用されお金がもらえてしまう可能性まであります。お金以上にコンペで勝ったという実績になり就職活動でもアピールポイントになりますし自信にもなります。

実際に私はWebデザイナーの勉強を初めて約2ヶ月のときに、初めてコーポレートサイトのWebデザインのコンペで採用を勝ち取りました。相場よりも報酬が安い案件だったりすると、ライバルも少ないので獲れてしまうということはあり得ます。なにせこちらはお金を目的にしていないのですから安い報酬でも時間をかけて制作ができる分強いです(笑) もし採用されなかったとしても、その作品はポートフォリオとして利用できます。

一点、注意が必要なのは、著作権や個人情報の問題です。案件によっては、依頼主からロゴや写真といった素材や住所、電話番号といった会社情報が提供され、それらを作品に入れ込むことになります。それらを公にしてしまうのは問題がありますので、ポートフォリオに載せる際はそれらはダミーのものに差し替えましょう。

コンペに応募する案件数の目安としては、訓練校などで作成するポートフォリオに載せられる作品数にもよりますが、Webデザイン制作5件〜10件、バナー制作5件くらいでしょう。ポートフォリオ全体としてWebサイトで10サイト、バナーで5バナーくらいにはしたいですね。

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